今回はラオスの最南端チャンパサック県立病院で癌センターと行った内視鏡検診に参加してくださった阪口先生のレポートを2回にわたってお送りします。
チャンパの花咲く町
今回の検診は、ラオス南部チャンパサック県パークセー市のチャンパサック県立病院(写真1)で2024年12月16日から20日まで、行われました。チャンパサックの意味は、チャンパの花の町という意味で、チャンパはラオスの国花で、白に黄色が混じった花弁が特徴の樹木です(写真2)。首都ビエンチャンから飛行機で1時間、または車で12時間のところです。11月にまず大便でピロリ菌抗原検査を行い、陽性であった約200名が対象です。陽性率は約37%との事でした。
検診スタッフは、ビエンチャンからラオス癌センター、マホソト病院、セタティラート病院、タイオリンパス協力会社の、混合ビエンチャンチーム、タイ・バンコクからタイオリンパスのタイチーム、当地チャンパサック県立病院のチャンパサックチーム、そして日本から私、の総勢約20名の医師、看護師、メディカルエンジニア、営業の面々。
当地の県立病院には内視鏡が1本しかないため、ビエンチャンチームはがんセンターから内視鏡本体1台、内視鏡3本を車に積んで、12時間かけて運んでくれました。おかげで、今回は初めて2台の内視鏡を使って検診が出来ました。ちなみに私はベトナム航空を利用したため、14日関空からホーチミン市で乗り換えて、プノンペン経由ビエンチャンに同夜に到着、一泊して翌日の飛行機でパークセー国際空港に着きました。
内視鏡検診は、本年1月のラオス北部のルアンパバーン、3月のビエンチャン以来、三回目になるので、スタッフの多くは顔見知りで、「久しぶりー」という雰囲気で開始です。16日初日、検診開始前に県立病院副院長、がんセンター所長の出席のもとセレモニー(写真3)が行われ、今回の検診の目標について全員で確認しました。私も慣れない英語で、HIGANを代表して、挨拶をさせていただきました。
初日は26例、2日目33例、3日目32例、4日目16例、5日目17例、で、最終的には受診者は123名でした(写真4,5,6,)。ピロリ菌除菌薬のみ受け取りに来て、検査を受けずに帰った人が約60名もあったようで、まだまだ内視鏡検査が一般的ではないと思われました。その理由は、安定剤の使用が一般的でなく、内視鏡検査は苦しいものという評判ができていること、内視鏡検査は平均50~100USドルが相場で、保険制度が十分でない国であるため、検査費用が高いということ、それに300床の県立病院で内視鏡が1本という医療器材の少ないことなどが原因と思われました。
検診は特に問題となる合併症の発生もなく終了できました。今年の1月には内視鏡に慣れていなかった若い先生も、約1年の経験で、診断や生検の手技は確実に上達していました。傍について、同じ画面を見ながら見守りましたが、余り口を出す必要がありません。また経験が豊かなビエンチャンチームの先生二人は、ラオス語で当地の若い先生の指導を行いました。ピロリ菌検査のための生検標本の冷凍保存についても、若い先生が大変協力的で助かりました。
結局、胃癌を強く疑う症例はなく、悪性が疑われたものは、消化管間質性腫瘍疑いの1例のみでした。総じて、萎縮性胃炎の軽度な症例が多く、平均年齢も40歳未満とのことで、胃癌リスクの低い人が多かったのではないかという印象です。検診の対象者がピロリ菌陽性者であったため、萎縮が強くピロリ菌が陰性化した患者さんが除外されたということも、原因の一つかも知れません。
写真1(上段左)チャンパサック県立病院玄関
写真2(上段中)チャンパの花(ラオス国花)
写真3(上段右)検診開始前のセレモニーで全員集合(前列中央県立病院副院長、左側ラオス癌センター所長)
写真4(下段左)HIGANとラオス癌センターとの協力の下、検診が行われました。真ん中のポスターはSSS(systematic screening protocol for the stomach)の解説図
写真5(下段中)検診風景:癌センターの将来を担う若い先生と私。
写真6(下段右)検診風景:初めての内視鏡2台での検診。
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